研究概要 |
近年, 多くの楽曲データが容易に入手可能となったことが背景となり, それらの有効活用を目的とした音楽情報処理の研が盛んに行なわれている. 楽曲データは様々な表現が可能であるが, 本課題では, 記号レベルで記述された楽曲データを対象に, コード進行パターンの共有を根拠とする楽曲のクラスタ抽出について考察した. 本年度は特に, コードパターンの時系列として捉えた楽曲における, コードパターンの半順序構造に注目し, それを共有する楽曲をクラスタとして抽出することを試みた. 同一のコード進行に対して, 様々なメロディーやリズムをのせることが可能であるという事実から, コード進行は楽曲の本質的な構造を表わすと考えられる. 楽曲のコード進行は, 言うまでもなく, コードの時系列であるが, 音楽理論においては, 各コードの持つ機能をもとに, いくつかの特定の連続したコード列が典型的なコードパターンとして知られている. よって, それら典型的なパターンを含む様々なコードパターンの時系列としてコード進行を捉えることで, その楽曲が有する音楽的な構造をより明確にすることを目指した. 具体的には,これまでの研究で開発されたTop-N形式概念探索の枠組に基づき,楽曲クラスタとそれらが共有するコードパターンの飽和半順序構造の組を形式概念として抽出することで, 楽曲構造の観点から解釈可能なクラスタを獲得する手法について考察した.
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