平成20年度は、18・19年度に開発した手法を2次元画像処理へ応用した。セルオートマトン(CA)は画像処理との適合性が高く、Cellular Programming、Cellular Neural Networkなどを含め、多くの応用例が存在している。またCAはモデルの単純さからハードウェア実装が容易であり、超高速画像処理への応用が期待されている。 Rosinは二次元2状態CAのルールを対象に学習を行い、二値画像処理を行うCAを設計した。適応度関数を定義することができればノイズ低減、エッジ検出、凸包の計算など、様々な処理を行うCAを設計できることがこの研究において示された。同様の研究として、エッジ検出処理を行うルールをGAによって進化的に設計した例を挙げることができる。これらの研究は二値画像を対象としていた。Rosinは上記の研究において多値画像のノイズ低減を行ったが、処理には2状態CAを用いていた。この手法ではCAによる処理を繰り返し行うため、計算量が大きいという問題がある。 そこで本研究では、多値画像のインパルスノイズ低減を行う多状態CAを進化的に設計する手法を開発した。ルールを木構造のプログラムとして表現するGEPを用いることで、多状態CAのルールを直接設計することが可能となった。評価実験によって提案手法の有効性を検討した結果、提案手法のノイズ低減性能は高く、また従来手法よりも高速な処理が可能であることを示した。またCAでは、ルールを繰り返し適用する特徴を利用した処理が行われていたことがわかった。今後の課題としては、より性能が高くかつロバストな画像フィルタ設計のためルール変化型CAを改良すること。またエッジ検出など、ノイズ低減以外の画像処理へ提案手法を応用することなどが挙げられる。
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