研究概要 |
人工知能の実現において機械学習は最も重要な研究分野の一つであり,その可能性を数理的で厳密に解析を行う計算論的学習理論と呼ばれるパラダイムが,近年活発に研究されてきている.そのような研究の対象として形式言語を選択し,その部分クラスの中で実用上重要な決定性文脈自由言語を受理する決定性プッシュダウンオートマトン(DPDA)またはそれに対応した文法について,その構造に妥当な制約を課した部分クラスを幾つか対象として選び,計算論的な手法によって学習アルゴリズムを開発し,その応用を図ることを目的として研究を行った.本年度は以下の研究成果を得た. 1.学習アルゴリズム開発の基礎構築DPDAに出力機構を付与した決定性プッシュダウン変換器(DPDT)の等価性問題について,ε-推移を許したある種のDPDTに対する単純かっ直接的な判定アルゴリズムを開発し,これまでに発表された研究成果の拡張を行った(現在,電子情報通信学会和文論文誌に投稿中).等価性判定は形式言語の学習において重要な意味を持っており,この成果はDPDTの部分クラスに対する質問による学習に利用することが期待できる. 2.学習アルゴリズムの開発ある種の言語クラスを元にして準同型写像による変換を施すことで得られるような言語クラスに対して,正例からの極限同定を統一的に扱える手法を開発し,この成果を国際会議ICGI2006で発表した.また,Szilard strict DROCAと呼ぶDPDAの部分クラスに対して,正例からの極限同定アルゴリズムを開発し,ある意味において多項式時間極限同定可能なことを明らかにした(近日中に電子情報通信学会英文論文誌に投稿予定).
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