研究概要 |
本研究では日本語から手話への機械翻訳を次のようなステップに分けて行っている。 1.日本語テキストから日本語を援用した手話表記法による手話テキストへの翻訳(言語的な変換) 2.手話テキストからSignWritingへの変換(表現の変換) このうち1.のステップに関しては,手話を母語とする話者による日本手話のビデオ映像から取得した手話文とその日本語訳をもとに,翻訳規則(パターン翻訳規則,機能語翻訳規則,内部表現構造から手話テキストへの線状化関数)のシステムへの組み込みを実験的に行った。その結果,動詞の方向による格関係の表示や非手指動作による文法標識など,手話に特徴的な表現への翻訳が可能であることが確認できた。一方,その過程で,日本語に比べて手話では事柄を具体的に表現することから,手話への翻訳では文中に明示されていない情報を補う仕組みが必要であることなど,いくつかの問題点も明らかになった。 2.のステップに関しては,手話テキストをSignWritingへ変換するための語彙辞書の形式について検討を行った。SignWritingはIMWAと呼ばれる図像的な基本記号(アルファベット)を2次元的に配置することにより,手話の動作を記述する。手話単語は文法的な情報や副詞などの語彙的情報を表現するために語形(手の形や位置,動き)が変化する。また,顔の表情や頭の動きなどの非手指要素によっても同様の情報が表現される。現時点ではこれらの変化をあらかじめすべて辞書に用意するのではなく,辞書に登録された基本形から変化形を自動生成することを構想している。SignWriting用語彙辞書に,日本手話の単語の基本形を構成するIMWA記号とその位置情報のほか,語形変化と非手指要素追加のための情報を持たせた。この辞書を用いて,単語の表現位置の変化と顔の表情による文法標識の追加が自動生成できることが確認できた。
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