研究概要 |
本年度は,まず,昨年度までに構築してきたモデルを拡張して,顕著性マツプ上での並列前注意を物体セグメントに基づく逐次選択的注意に図地セグメンテーションを介して統合させることにより体制化された知覚を生成する注意・セグメンテーション・知覚体制化のモデルを構築した。本モデルの特徴は,動的に形成されるマルコフ確率場での多重の図地セグメンテーション,顕著性・閉領域性・注意バイァスから計算されるセグメントの注意度に基づく選択的注意の制御,視覚作業記憶での注意が向けられたセグメントの維持とそれらセグメント間の知覚体制化にまとめられる,Caltech画像データベースの複数のカテゴリの画像を用いた実験を通じて,指定カテゴリの物体またはそのセグメントに選択的注意が向けられること,注意を向けられた物体を構成するセグメント間または物体とその目立った周囲のセグメントとの間に知覚体制化が生ずることを示して,本モデルの有効性を確認した,次に,この知覚体制化が,物体の全体部分関係,及びその不変性・多態性に係わる物体の構成的知覚に役立つこと,また,ある物体に関する視覚的な共起コンテクストを与えることより視空間の構成的知覚に役立っことに着目して,これら関係付けられたセグメントをクラスタリングすることにより,物体の不変・多態的構成パターン,及び物体とそのコンテクストとの関係パターンを獲得することが可能なこと,また,セグメントの注意過程にこれらセグメントの構成的知覚に関する知識を組み入れてセグメントの注意度を制御することにより,体制化された知覚パターンの想起に基づく不変・多態的な認識,及びコンテクストの認識が可能となることを論じた.
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