研究概要 |
本年は,視覚的空間情報と聴覚的空間情報の相補的連携の基盤となる,周波数領域両耳聴モデルによる複数音源の方向推定,先行音効果モデルの基礎的な研究を行った。また,セキュリティカメラへの応用を想定した物体による回折情報をもつ伝達関数の自動測定装置の構築を行った。 1)周波数領域両耳聴モデルによる複数音源方向の同時推定 既に開発済みである,2次元(方向角,仰角)の音源方向推定が可能な周波数領域両耳聴モデルを改良し,複数音源の同時推定が可能なアルゴリズムを開発した。シミュレーションにて性能を検証し,複数音源の同時方向推定の可能性を示した。その結果を英文学術誌へ投稿中である。 2)先行音効果モデル 聴覚的空間情報のみで推定精度を向上させるための一つとして,反射音の影響の低減が挙げられる。その一つの手段として,先行音効果のモデル化が考えられる。本年度は,基礎的なモデルの構築を行い,先行音の検出を検討した。結果,周波数領域両耳聴モデルのフレームシフト量を変化させることにより先行音検出の可能性が示唆された。 3)伝達関数の自動測定装置 視聴覚連携モデルの応用のひとつとして,セキュリティカメラが挙げられる。そのような小型物体による回折現象を利用する場合,物体の形状に依存する伝達関数に基づくデータベースを構築する必要がある。仰角方向を含むデータベースの構築を効率的に行うために自動測定装置を構築した。 以上より,次年度に検討を行う視聴覚連携モデルの基礎となる聴覚モデルの高度化を行った。
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