研究概要 |
本年度は主として、以下の2つのテーマで成果を得た:(1)局所不変特徴量抽出アルゴリズムの実装【成果説明】局所特徴量に基づく画像間の対応付けに関し、今後の研究方向の指針を得ることを主たる目標とし、DoG filter, Harris detector, Hessian matrix, Laplacian filter等に基づく種々の局所領域抽出法と、輝度の差分や輝度勾配に基づく記述子計算法の実装を行った。そして、それらを映像内の広告看板および道路標識の認識に適用し、各方法の特徴や性能の把握をした。これらの内容の一部に関し、学会発表を行った。その発表に対し、社団法人自動車技術会より優秀講演発表賞を授与されており、発表は研究成果の普及にも特に有効であったと言える。また、それらの成果に基づき、計算量削減のため、画像のフィルタリングに用いる関数の近似に基づく、新たな局所領域抽出法に関する基礎的な検討も行った。(2)画像間の対応点に基づく複数物体認識に関する研究【成果説明】対応点に基づく複数物体認識に関し、まず、記述子間の距離尺度の比に基づく誤対応除去方法の検討を行った。この方法は、距離尺度そのものを用いるよりも、外れ値と正しい値の判別性を向上させることができるが、比に対するしきい値の設定方法に問題があった。これに対し、適応的にしきい値を変化させる方法を提案し、その有効性を確認している。また、全ての対応点から1つの物体に対する画像間の射影変換行列を求める際、誤対応や他の物体の対応点の影響を排除するために、ロバスト推定を用いることを検討した。特に、推定の過程において、生じ得ない物体の見え方に対応する射影変換を除去する方法を提案した。この方法は、基本的にロバスト推定の1種であるRANSACに基づくが、ランダムに抽出されるサンプルから射影変換を計算した後に、その射影変換が現実にはあり得ない見え方に対応するかどうかの判断が組み込まれている。例えば平面物体であれば、物体が裏返ったり、ねじれて見えることはないので、そのような状態の変換結果を与える射影変換は、いくら他の対応点からの投票値が大きくても、視点の変化の記述としては正しくない。このような判断によって、現実にはあり得ない見え方に対応するが、誤って高い投票値を得てしまう射影変換を除去することができ、推定精度が向上する。これらの手法を用いたアルゴリズムを映像内の広告看板の認識に適用し、その成果を国際会議において発表している。
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