研究概要 |
本研究は,従来の研究で解決法がまだ確立していない「移動音源」と「突発音」の分離に焦点をあてて,新たな音源分離の技術を開発することを日的として行われた. 「移動音源の分離」については,3つの方法を提案することに成功した.1つは,収束の速度が速いブラインド信号分離に関する方法である.この方法の特徴は,まず,参照信号と呼ばれる信号を使うことによって,Closed-Formに問題を解けるようにし,その結果,一般化固有値問題を解くことによって、複数音源の分離が実現可能になるところである.提案したアルゴリズムは,推定するパラメータが精度良く求まれば,一回の計算で分離したいすべての信号が得られる.従来の分離方法では,ほとんどの方法が繰り返し計算を必要とするものであるが,提案法は,繰り返しの計算がほとんどいらないので,その分,計算時間が短縮され,収束が速い方法となっている.また,音源からの情報がほとんどない場合でも分離が可能な方法になっている.2つ目は,時間変動環境にも適応が可能な超指数法と呼ばれる方法である.このアルゴリズムは,その名のとおり,指数を越える速さで分離が実現できる方法になっている.3つ日は,音源からの情報として,音源と音源からの信号を観測するセンサ間の伝達特性が使えるものとして,その情報を利用する分離方法である.2つの移動音源を考え,それらの移動音源の分離を試したところ,移動音源の分離が実現可能であることが分かった.3つの音源分離法を比べると,3番日の方法が一番,移動音源に有効に働くと考えている.「突発音の分離」に関しては,突発音に特化した分離法を提案することはできなかったが,3番日の方法によって,突発音の分離は可能であると考えている.有効性に関しては,今後調査する予定である. これらの分離法を,機械との対話を行うインタフェースに適用することで,どこまでインタフェースの機能を向上させることができるようになるのか,さらに,もっと進んで機械との対話を日的とするインタフェースにとって役に立つ音源分離とは何なのか,ということを明らかにするということも日的に掲げていたが,残念ながらそこまでは,進まなかった.しかしながら,提案した分離法は,それらを使うことで対話型インタフェースの機能を向上させることが可能になり,対話型インタフェースにとって役立つ音源分離法になるであろうと確信している.
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