聴覚障害者にとって使いやすいWebコンテンツを制作するために、以下の実験を実施した。 1.実験の内容: 1.1 被験者 聴覚障害者群16名、健聴者群16名。インターネット使用経験、日本語運用力は統制。 1.2 課題 インターネットのポータルサイトで使われている代表的なディレクトリ(27個)をあらわすようなピクトグラムを準備し、ピクトグラムとディレクトリを対応させる課題を実施した。制限時間無し、質問紙を用いて集団で実施した。 2.結果 2.1 ディレクトリ表現の意味理解 ディレクトリとして示した言葉の意味が正確に理解されているかどうかについて確認したところ「グルメ・オークション・地図」の意味は正確に理解されていないことがわかった。 2.2 ピクトグラムの意味理解 「資格、求人・転職」のピクトグラムの正答率は両群とも25%以下であり、ピクトグラムの意味理解が正しくされていないことが分かった。 2.3 聴覚障害者群と健聴者群のピクトグラム認知の差 上記のディレクトリとピクトグラム、および、両群とも100%の正答率となったものを除いて分析を行った。平均正答率を比較した結果、聴覚障害者は健聴者と比較して正答率が高く(86.61% vs 75.45%)、その差には有意傾向が認められた(p<.09)。最も差が出たピクトグラムは、「占い」であった(聴覚障害者75%、健聴者25%の正答率)。 3.考察 聴覚障害者がピクトグラムから意味を解釈する感性認知能力は健聴者よりも優れている傾向にある。聴覚障害者は音韻的な符号化と併用して視覚的な符号化を行っているため、約87%の高い正答率を出せると考えられる。アクセシブルなWebコンテンツを提供するためには、このような特性に配慮し、音声言語情報(文字・手話)だけでなく、ピクトグラムなどのイメージ情報を効果的に利用したWebデザインを行うことが有効であろう。
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