本研究の日的は、聴覚障害者がウェブベースのタスクを円滑に遂行できるようなユーザインタフェースの要件を明らかにし、それに基づいてウェブサイトをデザインする方法を提案することであった。 今年度は、ポータルサイト等のディレクトリを利用して情報を検索する状況を想定し、ディレクトリの表現方法が検索行動にどのように影響するかを、視線計測実験を行って検討した。ディレクトリは、テキストのみ、ピクトグラムのみ、ラベル付ピクトグラムの3種類で表示された。ディレクトリ数は27であった。21名の健聴者、21名の聴覚障害者が被験者として参加し、38の情報探索課題を達成することを求められた。被験者は、いずれかの表現方法(テキスト、ピクトグラム、または、ラベル付ピクトグラム)でディレクトリが表示されているウェブページから、課題を達成するのにもっとも適していると思われるディレクトリを速やかに選択することを求められた。 実験の結果、以下のことがわかった。1)平均タスク遂行時間はピクトグラム表現が、他の表現に比べて有意に長い、2)選択されたディレクトリのばらつきを情報論的エントロピーで指標化すると、平均エントロピーの値はピクトグラム表現が他の表現に比べて有意に大きい、つまり、ばらつきが大きい、3)視線計測データから平均視線停留時間と平均視線停留回数を導出し情報獲得効率として指標化すると、ラベル付ピクトグラム表現のみにおいて、健聴者、聴覚障害者の間に有意な差が認められなかった。また、聴覚障害者において、ラベル付ピクトグラム表現とテキスト表現の間に有意な差が認められなかった。 以上の結果から、ディレクトリを利用した情報探索課題において、ディレクトリをラベル付ピクトグラムで表現すれば、聴覚障害者が健聴者と比べて同等のパフォーマンスを出せることがわかった。
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