研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、聴覚障害者がウェブベースのタスクを円滑に遂行できるようなユーザインタフェースの要件を明らかにし、それに基づいてウェブサイトをデザインする方法を提案することであった。平成18年度は、聴覚障害者16名、健聴者16名を対象として、インターネットのポータルサイトで使われている代表的なディレクトリ(27個)をあらわすようなピクトグラムを準備し、ピクトグラムとディレクトリを対応させる課題を実施した。平均正答率を比較した結果、聴覚障害者は健聴者と比較して正答率が高く(86.61% vs 75.45%)、その差には有意傾向が認められた。アクセシブルなWebコンテンツを提供するためには、このような特性に配慮し、音声言語情報(文字・手話)だけでなく、ピクトグラムなどのイメージ情報を効果的に利用したWebデザインを行うことが有効であろうとの結論を得た。平成19年度は、前年度に続き、ディレクトリの表現方法が検索行動にどのように影響するかを、視線計測実験を行って検討した。ディレクトリ(27個)は、テキストのみ、ピクトグラムのみ、ラベル付ピクトグラムの3種類で表示された。聴覚障害者21名、健聴者21名を対象として、情報探索課題(38種類)を実施した。結果は、次の通り。1)平均タスク遂行時間はピクトグラム表現が他の表現に比べて有意に長い、2)選択されたディレクトリのばらつきはピクトグラム表現が他の表現に比べて有意に大きい、3)視線計測データから平均視線停留時間と平均視線停留回数を導出し情報獲得効率として指標化すると、ラベル付ピクトグラム表現のみにおいて、健聴者、聴覚障害者の間に有意な差が認められなかった。また、聴覚障害者において、ラベル付ピクトグラム表現とテキスト表現の間に有意な差が認められなかった。以上から、ディレクトリをラベル付ピクトグラムで表現すれば、聴覚障害者が健聴者と比べて同等のパフォーマンスを出せることがわかった。
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