研究概要 |
相関の強い確率分布の学習問題は,意味の抽出,意味の相関,確率的連想,翻訳,1つの結果から複数の原因の確率的推計などの実用問題に多く見られる。例えば,翻訳には正確な意味の解釈を必要とするが,1つの単語は複数の意味を持ち,1つの単語の意味は周りの文章の影響を受け,他の単語の解釈にも影響する。 申請者らは確率的ユニットからなる層状フィードフォワードニューラルネットワークを用いると,相関の強い確率分布の学習が可能であることを数値計算などで実証してきた。ここでは相関の強い確率分布の学習における確率ユニットからなる層状フィードフォワードネットワークの能力を体系的に研究し,学習能力を向上し,実用問題への応用の可能性を開くことを目的とする。 平成19年度においては,平成18年度の成果を基に「文脈の意味の解釈に応用する」研究を行った.例えば「リゾート地で遊ぶ」と言う文章が与えられた場合,「リゾート」の解釈として「海」と「山」があり,「遊ぶ」の解釈として「泳ぐ」と「キャンプ」があるとする.通常では「海で泳ぐ」か「山でキャンプ」と解釈することが妥当であろう.しかし文脈の前後に「臨海キャンプ場」や「高原の湖」などの表現があった場合には,「海でキャンプ」や「山で泳ぐ」という解釈の可能性が高まる.このような相関の強い連想の確率的解釈の実用性を評価した.結果として,確率的ユニットからなる層状フィードフォワードニューラルネットワークは文脈の意味の解釈に応用することが可能であるが,日常会話に適用するには膨大な語彙の収容が必要となり,実装に向けた検討が必要であることが分かった.
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