研究概要 |
本研究では不確かさなどを含む複雑なシステムに対して競合・協調を考慮した学習や最適化などにより有益な機能を実現するための制御システム設計に関する研究を行った.平成19年度はニューラルネットワークの学習により,非構造的な不確かさに対するロバスト制御系を構築する手法について数値計算を用いて研究を進め,これらの学習法により得られた制御系の制御性能とロバスト性の定量的指標の間にべき乗則という秩序が形成されることを確認した.このとき,得られる解が(1)制御性能が低い領域においてロバスト性がほぼ一定である集合,(2)制御性能とロバスト性がべき乗則に従う集合,の二つの秩序を形成することを確認した.髪値計算の結果,二つの秩序が切り替わりには制御入力が有界であるという拘束条件が強く影響を与えていることを示した.複数モジュールの学習によるタスク自律的な分解とそれによる秩序形成を行う方法としてモジュール構造を持つニューラルネットワークにより制御系を学習する方法を提案した.その適用例として,垂直風を確率的な不確かさととらえ,それに対してロバストな無人ヘリコプタ用高度制御系の設計を行った.その結果,風に対するロバスト性を向上させるために運動方向により与えた制御タスクが分解され,それぞれの制御タスクにおいて適した制御系を学習により得ることができた.さらに,得られた制御系は従来の制御系設計法による制御系に比べて制御性能,ロバスト性いずれも向上させることができた.学習により得られた制御系により無人ヘリコプタの飛行制御実験を行い,風に対するロバスト性が向上することを確認した.また,提案手法により得られる制御系には簡単な秩序形成が確認でき,形成された秩序を利用することにより適応的にロバスト性を変化させる新たな適応ロバスト制御系へと発展させることができることを示した.
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