平成20年度は、文献に基づき考察を進めると共に、2回にわたりアメリカでの調査を実施した。まず、シカゴ・ニューベリー図書館とニューヨーク・グロリアクラブ図書館にて調査を行った。ニューベリー図書館では、バトラーの収集したインクナブラの具体例、収集時に参考とされた販売目録、収集方針等をめぐって取り交わされた書簡等を閲覧し、これまでの考察結果をより確かなものとすることができた。グロリアクラブでは、クラブ設立と発展の様子を示す文献や、セントブライド図書館分類法に影響を与えたと思われるクラブ図書館分類法に関する資料を収集した。グロリアクラブは、19世紀末、書物制作者のために書物芸術の研究と促進を目的としてニューヨークに設立された、書物芸術分野におけるアメリカ最古で最大の組織である。初代図書館長ケントによって考案されたグロリアクラブ図書館分類法は、ロンドンの印刷史専門図書館であるセントブライド図書館の分類法に多大な影響を及ぼしている。二回目の調査では、再度グロリアクラブを訪問し、セントブライド図書館長ペディーとグロリアクラプ図書館との交流を示す資料として、グロリアクラブ図書委員会議事録やセントブライド図書館長ペディーからの書簡等を閲覧した。これらの調査とこれまで入手した資料を通して、セントブライド図書館の目録編纂や分類システムに、グロリアクラブ分類法がどのように採り入れられたのかを探った。その結果、セントブライド図書館分類法は、デューイ十進分類法を基礎として作られたグロリアクラブの専門主題の分類項目に、印刷史的観点から編成されたプロクター分類法を組み合わせる形で体系化されたこと、さらにプロクターの手法を取り入れたこの分類法は、同図書館の多種多様な資料の組織化に今なお有効に活用されていることがわかった。
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