本年度は、広帯域データ通信ネットワーク(ブロードバンド)の普及に伴って利用が可能になった技術-個人間ファイル共有をとりあげ、ブロードバンド利用者の実情を、向社会的、反社会的の両面から明らかにすることが目的であった。 文献調査により、米国では、P2Pソフトウェア利用とそれによる罰則への不安の無さや倫理的意識の低下の間に関連性があることが検証されている。P2Pソフトウェア利用を止める方向へ導く要因として、ファイルの質の悪さと罰則への不安などが挙げられるが、P2Pソフトウェア利用を習慣としているものやコンピュータ・スキルの高いものは、継続する傾向が強かった。倫理的な抵抗感の有無は、P2Pソフトウェア利用を継続する意志との関連性が高いことも明らかになっている。 我が国でも、既存のP2P型のファイル共有(交換)システムの利用者の増加を法的な抑止力を用いてから、かなりの時間が経過しているが、P2P型のファイル共有システムはいっこうに減少していないと考えられている。その間に有害情報を含むファイル交換がますます増加していると言われている。 今年度は、ブロードバンド利用者(特に若年層)の個人間ファイル交換・共有技術(ブロードバンド利用の反社会的ニーズ)、特に、P2Pソフトウェア利用におけるニーズ等の要素に関連するデータを第1次、第2次調査によって得られた。 本年度の第1次調査結果(n=800)より、ファイル交換ソフトに対する認知は増加していることと同時に、ウィルス感染のリスクの原因としての認知も同時に増加していることが明らかになった。また、本調査のファイル交換ソフトの利用者は、米国と同様、その利用への倫理的・法的な抵抗感が少ないこともわかった。第2次調査のデータは分析中である。
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