本年度は、個人間ビデオ通信に関連するブロードバンド利用者の社会ニーズの実情を明らかにすることが研究の目的であった。本研究の結果、次のような個人間ビデオ通信の社会的ニーズがあった:1)人と知り合う、2)遠隔地にいる友人・知人・家族と様々な情報交換、3)語学学習や趣味の習得、4)医療の受診、5)弁護士などの専門家からのアドバイスを受ける、6)犯罪防止目的の監視活動、7)職場の部下の監視活動、である。これら項目の一般性を検証するためにインターネット調査(n=1000)を実施し、現在、調査データ分析中である。またブロードバンド利用者の間では、非同期での個人ビデオの公開・配信の普及が進んでいる中、この情報環境が公共的なメディアとしてコミュニティーの形成に役立っている反面、様々な問題(著作権等)も生じている。 著作権等の問題と関連するブロードバンド利用者の個人間ファイル交換・共有技術におけるニーズ等の要素に関連する第2次調査(nニ600、年齢10-59歳)の結果は次の通りであった。ファイル交換ソフトの利用に関しては、ウィルス感染のリスクやその非合法的な利用によるリスクがあると思う被調査者が6割以上であったが、一方では、その利便性と可能性を認める回答も6割以上であった。情報の共有に対しては、必要性の意識は高いものの実際の情報共有に参加することに対しては積極的ではなかった。スパイウェアやウィルス感染対策を行っているとの回答が多いものの、それでも若干不安を感じると回答するものが多かった。被調査者における情報共有意識に対するアンビバレンスが検証できた。
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