研究概要 |
本研究の本年度の主な計画は,戦後の経済成長と地域開発の過程で深刻化してきた条件不利地域の地域格差と情報格差(デジタル・デバイド)の現状と課題を明らかにすることである. 本年度は研究計画通りに文献収集と実態調査に重点を置いて進めた.第1は,条件不利地域の開発問題と環境問題および地域資源(観光資源も含めて)に関する文献の収集と分析を行った.特に,地域資源が国際的に評価されているイギリスに関する書籍を中心に収集して分析した. 第2は,条件不利地域の実態調査を実施した.特に,市場経済条件が厳しい北海道,沖縄,山陰地方を調査で訪れ,統計データでは得られない過疎化の現状を観察することができ,有益な知見を得ることができた. 第3は,条件不利地域に存在する地域資源の価値を見つけ出す工夫として,デジタルカメラで地域資源を撮影し,その風景などを多くの人々に見せることにより,潜在的な過疎地の地域資源の魅力が見出されるのではないかと考え,視覚的に捉えながら分析に取り組んできた.その結果,過疎地域の地域資源の中に,現代のIT社会でストレスを感じている多くの人々にとって癒し効果が大きいことが分かってきた.いわゆるITで近代化した現代社会の人々と,過疎地の地域資源との間を結ぶシステムの重要性に気付いてきた. 以上の初年度の調査および分析の結果,デジタル・デバイドが深刻化している条件不利地域であるが,その多くの地域では国立公園などの風光明媚な地域資源が存在しており,この地域資源に着目して地域再生に結びつくシステム構築の可能性が実感できた.本年度の成果は次年度の基礎研究として有益であった.なお,本研究の一部は,すでに熊本大学教育学部紀要に掲載して公表している.
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