本研究課題の目標は、グラフィック表現の認知機能の研究に対して、意味論的分析の側から貢献を行うことである。本研究課題において行っているグラフィック表現の意味論的分析の主な帰結は、ある情報を図で表現する過程において、その情報から論理的に帰結する別の情報が自動的に表現されるという性質(フリーライド特性)を多くの図がもつ、ということである。この性質は、人が図を使って論理的な推論を行うプロセスに強く影響することが考えられ、それを確かめるために、平成18年度に引き続き、人が図を見ながら推論問題を解いているときの視線の動きを計測するという実験を行った。その結果、たとえ図を物理的に変形できない場合でも、人がフリーライド特性を利用しようとする傾向について、平成18年度に得たものよりも強い証拠が得られ、図が従う空間的制約の利用が図を使った推論の効率性の重要な要因であることが明らかになった。
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