本研究では、心の理論の発達に短期記憶と実行機能がどのように影響するのかを調べた。そのため、3歳児、4歳児、5歳児を参加児として、短期記憶課題、心の理論課題、分類課題などを実施した。その結果、誤信念課題の得点は、実行機能の課題の成績よりも、短期記憶の成績との相関が高かった。この結果は、心の理論の発達は短期記憶容量と関連していることが示唆された。また、心の理論は実行機能との関連が示唆されなかった。 また、なぜ日本の子どもの心の理論の発達が遅れるのかについて、母親の養育にも焦点を当てて検討した。すなわち、幼児の衝動性は母親の養育の仕方に影響すると考えられる。そのため、母親の幼児の心の理解の仕方が、幼児の心の理解の発達に影響しているかどうかについても検討した。そこで、母親に子どもが騙すときに身体の変化をどのように気づくのかを調べた。その結果、子どもの心の理論の発達と同じように4歳児でも認識の移行が認められた。すなわち、母親の心の理解の仕方が、子どもの心の理論の発達に影響していることが示唆された。
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