子どもの心の理論の認識の発達に母親の子どもの心の読み取りが影響しているのかを調べるために、母親による子どものTOM行動(心の理論に基づく行動)をどれだけ認識できるのかを調べた。その結果、子どものTOM行動を認識が優れる母親と認識が劣る母親がいることが明らかになった。さらに、それらの母親のTOM行動の認識の仕方にどのような差が見られるのかを調べた。その結果、子どものTOM行動を認識が優れる母親は、子どもの心の状態を知るために、目だけでなく、鼻や耳など身体的部位に注目して、子どもの心を推測することが見られた。また、身体など顔以外の身体部位についての注意が見られ、それらの部位の変化から子どもの心の状態を推測する傾向が見られた。それに対して、子どものTOM行動を認識が劣る母親の場合は、目に対する注意はTOM行動を認識の優れる母親よりも量的に少ないが、注意し心を推測する傾向が見られた。また、耳や鼻についてはほとんど注意が見られなかった。さらに、手や足についても、心を理解するのに認識することが見られなかった。これらの結果から、子どものTOM行動を認識が優れる母親と認識が劣る母親の違いは、目に対する注意があるだけでなく、耳や鼻など、また手や足などへの注意が少ないことが明らかになった。このような認識の違いが、子どもの心の認識の違いを生じるのではないかと推測される。すなわち、心の理論の発達が、実行機能よりもむしろ、母親のTOMの利用が子どもの心の発達に影響していることが示唆された。
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