1.因子分析等における漸近展開 漸近展開の基本は母集団漸近キュミュラントを用いて統計量の分布の近似を求めるものであるが、これらは現実では通常は未知である。そこで標本キュミュラントを用いたステューデント化統計量についても漸近展開を行った。ステューデント化は非正規分布データでは4次の標本キュミュラントが必要となり、不安定性が予想されるため正規理論によるステューデント化統計量の漸近分布を正規分布データ・非正規分布データについて導出した。また、いわゆるモデルの適合指標についても漸近展開を行った。 2.標本アルファ係数等の漸近展開 標本アルファ係数は心理統計学における信頼性の指標の推定量である。このほかにも各種の信頼性の指標がある。変数がグループ化されている場合には層化信頼性指標が実用的なものとして用いられる。信頼性の指標は分散共分散行列と相関行列で定義され、それらの標本分布は一般に異なるため漸近展開を両者について求めた。 3.回帰分析における漸近展開 説明変数が確率変数の場合も回帰分析における回帰係数の推定量は、説明変数と従属変数間の標本分散共分散及び説明変数内の標本分散共分散の初等関数として得ることができる。また、説明変数と従属変数に関する共分散構造は回帰係数とともに説明変数と誤差変数のそれぞれの分散共分散をパラメータとするモデルとして構成できる。これを手がかりにして正規理論による標本回帰係数の非正規分布下における漸近展開を行い、漸近キュミュラントの漸近頑健性を調べた。
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