研究概要 |
本年度は信号の相関に基づく復号では、受信信号から送信信号を予測する必要がある。受信信号が非正規分布に従う場合は、信号予測に一般化線形モデルを用いる必要があり、その予測精度の評価が必要である。一般化線形モデルがエントロピーの変化を表現することを示し、モデルにより説明された割合として解釈できるエントロピー相関係数の提唱を行った(Eshima & Tabata, Statistics and Probability Letters,77,588-593,2007)。この相関係数のスペクトル拡散信号処理への応用は、継続的な研究課題である。スペクトル拡散信号の同期法では、同期判定の迅速性、精度、および装置としての実行上での複雑性の観点から議論される。本年度は同期判定法の複雑性の軽減を目標に研究を行った。直接の受信信号は実数値であり、実数値は基本的に記憶と相関処理だけでも、相当な記憶素子が必要になり、処理回路は複雑になる。例えば、1つの実数値を記憶するだけで16ビット以上は必要である。相関処理は符号との積と和が行われるので、装置に対する複雑性は大きい。この複雑性を軽減するために、受信信号を正負の2値信号に変えて処理する同期法を提唱した。このことにより、実数を16ビットで表現すると仮定すれば複雑性は16分の1に出来ることになる。実数信号を用いた場合の情報量から見た効率はおよそ0.6であり、装置の軽量化に対するトレードオフは良好といえる(Eshima, Kohda,& Tabata, IMA Journal of Mathematical Control and Information,24,289-297)。
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