研究概要 |
歪みリスク尺度に対して,従属性のある時系列データに基づく推定量(L統計量)の漸近的な統計的性質を厳密・詳細に分析した結果,定常かつ強ミキシング性の下で大数の法則や中心極限定理が成り立つための条件を明確に述べることに成功した.それらはこれまでの研究で得られているものを若干改善した結果となっている.さらに,ファイナンスデータに良く適合するとされるGARCHモデルを用いてシミュレーションを行い,この場合には理論的に得られた漸近正規性がある程度の標本数で実現されていることやここでも比例オッズ・リスク尺度が統計的扱いやすさを有していることが示された.これらの結果については,本年度に国内外のいくつかの研究集会において発表した. 様々なリスクの従属性を分析するための鍵である接合関数(コピュラ)については,以前の論文に大幅に加筆・修正を施した概説論文を執筆し(文献の項参照),2008年3月に成城大学で開かれた日本統計学会春季集会で発表を行い,2008年8月に論文集「21世紀の統計科学III:数理・計算の統計科学」(北川源四郎・竹村彰通編,東京大学出版会)に所収された.これに関連して,当研究課題とは少し話題がずれるが,生存解析の分野での接合関数の応用および漸近理論について,以前からの研究をまとめた論文が完成しつつある. 塚原を訳者代表としたグループで進行していた,"Quantitative Risk Management: Concepts, Techniques and Tools"の邦訳作業が終了し,2008年7月に共立出版から出版された.これに合わせる形で,英国からその分野の権威であるAlexander J. McNeil教授を招聘し,リスク管理研究に関する情報交換を行った.
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