研究概要 |
以下の3点について研究成果を得た. 1 多変量正規母集団のもとでの平均ベクトル間の対比較に対する多変量多重比較法の保守性に関連して,母集団の数が3つの場合の保守性の性質をまとめ,その上限に関する結果を導出することに成功した.この成果は,日本統計学会誌36巻(2006)に掲載されている.さらに,母集団の数が4つの場合の対比較に対する保守性について,未解決であった多変量一般化テユーキー予想の理論的証明とその保守性の程度を表す上限を理論的に与え,モンテカルロ・シミュレーション実験により詳細に検証し,論文としてまとめ,海外の学術専門雑誌に投稿中である. 2 データに欠損が生じた場合の非正則データにおける平均ベクトルの同等性検定及び同時信頼区間の構成を2標本問題さらに一般のk標本問題に拡張することを考え,詳細なモンテカルロ・シミュレーション実験を行い検証した.特に,分散共分散行列にある種の構造を仮定した場合の正確な検定統計量の導出と数値的反復法による尤度比検定統計量の導出に成功した. 3 多変量解析における検定統計量の分布の漸近展開近似式は,確率ベクトルの次元が大きくなると,正則な条件の下でさえもその近似精度は不安定なものとなることが知られている.この研究では,研究分担者を中心に,確率ベクトルの次元数が大きくなった場合でも,利用可能な検定統計量の提案し,その分布の漸近展開式を第3次項まで求め,その近似精度をモンテカルロ・シミュレーション実験により検証した.結果は海外の学術専門雑誌に投稿中である.
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