研究概要 |
本年度の研究成果は以下の2点である: (i)d次元上で定義され直積型の相関構造を持つカイ2乗確率場の,格子点上の最大値の上側裾確率の近似公式を,非線形再生理論の方法によって与えた.ここで考えている漸近論は,裾確率の閾値を無限大に,また格子点の間隔Δを0に近づけるものである.この近似公式をQTL解析における遺伝子座相互作用(エピスタシス)の検定へ適用しようとした際,問題となるのは上述の漸近近似による誤差,ならびにマーカー遺伝子間隔を等間隔Δとおくことによる近似誤差の2点である.これらについて,連鎖解析の典型的な例に即して,シミュレーションにより数値的な検討を行った. (ii)QTL解析の代表的な手法である区間マッピング法の,ロッドスコアの確率過程としての挙動を調べ,オイラー標数法によってその最大値を近似する方法について検討した.比較的標準的な尤度比確率場の議論(Ibragimov and Hasminskii, 1981)によって,サンプルサイズnを無限大とするとき,ロッドスコアは滑らかなサンプルパスを持つカイ2乗確率場に分布収束することを示した.また極限カイ2乗確率場の最大値分布の,オイラー標数法による近似を導いた. また2006年11月27日(月),28日(火)に研究集会「統計モデルの数理と実際」(統計数理研究所)を科学研究費基盤研究(A)18200019(研究代表者:竹村彰通)との共催で開催し,遺伝連鎖解析などについて研究打ち合わせを行った.
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