研究概要 |
積分幾何学的な分布理論であるチューブ法の考え方を用いて,ガウス歪対称確率行列の最大特異値の寄与率分布を与えた.この確率行列については,その最大特異値の分布は文献(栗木,1991,応用統計学)などによって知られていた.最大特異値をoriented Grassman manifold上のガウス確率場の最大値とみなし,一方で最大特異値の寄与率分布が球面チューブの体積に対応づけることによって,チューブ法の考え方を逆に辿り寄与率の分布を導出した.またガウス歪対称確率行列が非心(平均が非零)の場合について,寄与率分布の近似法について検討した. 導出した分布は,誤差分散が未知の場合のScheffeの一対比較モデル,あるいは過分散を持つBradley-Terryモデルにおける三すくみ多重検定に用いることができる.これらのモデルは,各個体には固有の「好ましさ」あるいは「強さ」を表すスコアが付与されており,対比較実験において両者のスコアの差が観測されるというものである.データに対してこれらのモデルを当てはめたときの乖離(残差)は三すくみとして解釈される.残差は歪対称確率行列の形で得られ,ガウス歪対称確率行列の最大特異値の分布理論が与えられることによって,多重比較の意味での残差解析が可能となった.
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