本研究は、既存の方法がとりあげなかった、死亡や心筋梗塞、脳卒中、心疾患など、生起するイベントの医学的重大さを加味した検定方法の提案を目的とする。その際、重みの付け方、一つの検定結果を出すための成分の合成方法が重要な課題である。 昨年度に考案した、連続変量に関しての新しい合成エンドポイントの検定方法について更に検討を行い、統計分野の最近の関連研究である対称分布の特性が応用できることがわかった。その特性を利用して、新しい合成エンドポイントの検定統計量として正確にt分布に従う検定統計量を導出した。新しい合成エンドポイントの医学的意味を反映させた新しい複合仮説を提唱し、t分布に従う3つの検定統計量を用いて優越性を検証する方式を示した。この3つの検定については検定の多重性の調整を必要としないが、第1種の過誤が厳しすぎる可能性があるので、様々な帰無仮説(相対的な医学的重さと非劣性の許容限界)について複数の真値を設定してsimulationにより評価を行った。 複数のエンドポイントの解析において、医学的重大さについては従来の定式化においてまったく考えられていないので、昨年度から引き続いて、文献調査や医学分野の学会に参加し見解を調査し、医学的重みの与え方を検討した。呼吸器疾患領域で具体的に相対的な医学的重さをFEVとFVCについて決める方法を文献調査を行ったり、医学専門家の意見をきいたりして検討した。これらの情報を統合して相対的な医学的重さを決める方法の1案を提示した。この結果を国内の統計関連学会で発表した。また、成果発表として連続変量に関しての研究結果を国際学会で発表し、本研究について海外の研究者と意見交換した。連続変量に関する本研究の成果は東アジア国際計量生物学会議での招待講演として公表され、論文として投稿中である。
|