研究課題
基盤研究(C)
タンパク質など生体分子系の分子動力学計算においては、静電相互作用を精密に取り扱うことが最重要であり、また、その計算をどこまで高速化できるかで扱える時間スケールが定まる。このとき、数値精度だけでなく、境界条件の影響を軽減することを通して、シミュレーションの信頼性を高めることも必要である。周期境界条件に起因するアーチファクトは、生体分子系については十分に解明されているわけではないが、等方性の少ない複雑な生体超分子系では深刻となるおそれがある。本研究課題は、高速多重極法による静電相互作用の計算において、境界条件に起因するアーチファクトを軽減するため、周期境界条件下での多重極配列の球形切断という基づく方法を開発することを目標としている。本年度は、周期高速多重極法と反作用場法を組み合わせた方法、並びに関連する基礎的手法とてしてのEwald法の実装についての検討を行った。通常のEwald法においても、グループ単位でのビリアル求値については様々な研究が行われており、本研究でも、この点を中心に検討を行った。周期高速多重極法でもEwald法に類似した格子和を利用することを予定しているため、引き続き来年度も、この最重点項目に取り組む予定である。また、本年度は、性能検証のための分子系モデルの製作も行った。対象としたタンパク質は、ヒト血清アルブミンと酸化ヌクレオチド分解酵素MTH1である。これらの分子系モデルについては、性能検証のみならず、それぞれのタンパク質の薬物動態学上あるいは生命医科学上の特性を解析するためにもシミュレーションを進めており、ヒト血清アルブミンと脂肪酸の相互作用などについて、一部、成果が得られ始めている。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Proteins : Structure, Function, and Bioinformatics 64・3
ページ: 730-739
IPSJ Transactions of Advanced Computing Systems 47・12
ページ: 182-192