タンパク質の二面角系の弾性ネットワークモデルによる基準振動解析を行うため、本年度は以下のことを行った。(1)弾性ネットワークモデルは、Protein Data Bank (PDB)から自動的に、しかも高速に基準振動解析を行うことを目指しており、通常の分子力学で採用されるポテンシャル関数とは異なる近似的なポテンシャルが用いられる。そのため、得られた結果の評価システムを整備しておくことが必要である。評価のためには、これまでわれわれが行ってきた通常の分子力学で取り扱われるポテンシャル関数を用いた二面角系モデル(高精度モデル)による基準振動解析の結果と対照することを考えている。そこで、われわれが構築してきたデータベースProModeの管理システムを改良、整備し、評価のための準備を行った。(2)弾性ネットワークモデルのプログラムを開発していく上で重要なポイントの一つは、PDBに含まれる分子構造データの二面角系ネットワークモデルで計算できるデータ様式への変換(具体的には、分子構造をグラフ理論のツリー構造として表現する)を自動的に行えるようにすることである。しかし、一つのサブユニットだけを対象としたものはすでに開発されていたが、リガンドを含むデータ、あるいはオリゴマーや、構造不定領域を含む多様なPDBデータすべてについて、自動的にそうしたデータを生成できるプログラムはなかった。そこで、そのためのアルゴリズムを考え、実行するためのプログラムを開発し々これにより、高精度モデルの基準振動解析モデルでは扱ってこなかったDNAおよび、それと結合するタンパク質といった系も扱うことが可能となった。こうした成果を踏まえ、来年度は、この分子構造データを用いた弾性ネットワークモデルによる基準振動解析計算本体の開発を行う予定である。
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