嗅覚研究に用いる匂い物質選択の指標を提供する、混合臭の研究の足がかりを作る等の目的で、匂いの本体である分子、および、ヒトが感じる匂いの質の調査・解析を行った。 1. 匂い分子の化学的特徴データの収集と計算、およびデータベースの作成 (1) 日本で香料添加物として使用される89物質を匂い物質の対象とし、平成20年度は、非経験的分子軌道法による計算を継続し、計算可能な化合物の計算をほぼ終了できた。また、分子の特徴としてIRおよびRamanスペクトルに着目しコンピュータを用い計算した。 (2) 研究により得られた匂い分子の情報は、データベースとして利用できるようまとめているが、平成20年度中に終了できなかった。早急に終了し、ウェッブサイトなどで公開する予定である。 2. ヒトが感じる匂いの評価(官能評価) (1) 市販芳香器、スクイーズボトルを利用した匂いの混合を試み、匂いの提示法や評価法を検討した結果、不快臭が加わると匂い全体の不快感が増加することが認められた。しかし、簡易的な芳香器は匂い強度の調整が難しいなど、簡易的な方法による匂いの混合と評価には課題が残った。 (2) 上記で計算した分子のスペクトルデータと匂いの質との関連を調べるため、サンプルビンを用いて10化合物単独の匂いの評価を行った結果、匂いの質の判別にスペクトルを利用できる可能性を認めた。
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