脊髄運動神経は、発生期に特定の筋へと投射するが、特定の運動神経軸索を特定の筋肉へ誘導する仕組みについては不明な点が多い。Pma(peroncal muscular atrophy)マウスは実験動物中央研究所で発見された自然発生の変異マウスで、先天的な腓骨筋の萎縮が見られ、その原因は、発生期に総腓骨神経が腓骨筋に投射しないことであると考えられている。Pmaマウスでは、特定の運動神経投射のみに異常が見られることから、運動神経の軸索ガイダンスの分子機構を解明する上で有用なモデル動物になると考えられる。 これまで、連鎖解析による候補領域の絞り込みを行い、その結果を基に、原因候補遺伝子の検索とそれらの発現解析を行ってきた。更に最近、全ての脊髄運動神経に特異的にEGFPを発現するトランスジーンを持つPmaマウスの作成に成功し、発生期の運動神経軸索の走行を可視化できるようになった。その結果、発生のどの時期にどのような軸索ガイダンス異常が起こるかを知ることができるようになった。 今年度も引き続き、ゲノムデータベースの進展に伴い遺伝子の注釈などについて、大幅に精度が高まったことを踏まえ、改めて、原因遺伝子の候補範囲内に存在する転写産物について解析を行った。具体的には、候補範囲内に存在する全ての転写産物候補でこれまで未解析であった全エクソン並びにエクソン/イントロンの境界部分について、Pmaマウスと野性型マウスのゲノムDNAからPCR法を用いて増幅したDNA断片を鋳型として塩基配列を決定し、変異マウスと野生型マウスの塩基配列の比較を行った。さらに系統差によりゲノムから増幅することが不可能である部分はRT-PCR断片を用いて解析を行った。フレームシフトやナンセンス変異は見られなかった。
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