コンドロイチン硫酸(CSs)の構造多様性が軸索路形成に及ぼす機能特異性は不明である。CSsの効果を調べるためにはスポットアッセイが従来から用いられてきたが、限界を明らかにし、新しいアッセイを確立した。 CSsスポットの上にlaminnをコートした場合、スポット内部のlamininの吸着が減少した;スポット内部のlaminin密度が低下しているので軸索が外部にとどまった可能性があり、スポット境界に於ける侵入阻止にCSsが寄与したとは言えない。lamininをコートした上に、スポットを作製した場合は、スポットが拡散し、境界が不明瞭になる等の問題が生じた。加えて、培養には無血清培地を用いるが、網膜の細胞が培地中に分泌する因子による条件付けを考慮する必要がある;条件付けられた因子のスポット内CSsへの結合を無視できないが、排除する方法はない。スポットアッセイは実験系として適当ではなかった。 スポットアッセイの問題は軸索の伸長を基礎的にサポートする培養基質(laminin)と実験の対象となる因子(CSs)が同一平面上に存在することにあると考えられる。CSsの末端に脂質を共有結合させたCSs脂質誘導体を合成し、ポリスチレンビーズの表面に疎水性に結合させ、CSsビーズを作製した。CSsビーズをアルブミン溶液であらかじめ処理することで、網膜の細胞から培地中た放出される因子の非特異的吸着を抑制した。このCSsビーズを培養基質上に散布し、網膜軸索が接触する際の行動変化をタイムラプス観察し、糖鎖CSsが成長円錐行動に及ぼす直接の効果を検討することが可能となった。異なった組成(ユニット含有率)を有する標品を利用してCSs脂質誘導体を合成し、CSsの構造多様性が成長円錐行動に及ぼす機能多様性の検討が可能となった。さらに、CSsビーズを蛋白質性ガイダンス因子とインキュベーションし、複合体を形成させ、成長円錐行動に及ぼす相互作用を検討することが可能となった。
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