研究概要 |
ニーマンピック病は、脂質代謝輸送の異常により脂質が神経細胞体に蓄積し、細胞死を誘導する神経変性疾患である。原因遺伝子としてNPC1、NPC2が同定されており、同疾患患者では、これら遺伝子の欠損あるいは変異が認められる。NPC1は、脂質のエンドソームからゴルジ間の輸送に関与していると考えられている。NPC1の変異は、本疾患の約95%の患者に認められ、その内の脂質との結合ドメインの変異については、脂質との結合が障害されるため、脂質輸送が阻害されることが知られている。一方、細胞内ドメインにも高頻度に変異が認められるが、同変異による脂質輸送障害の機序は不明である。本研究では、NPC1の細胞内ドメイン変異によるニーマンピック病発症のメカニズムを明らかにすることを目的に研究を実施し、以下の研究成果を得た。 1.Cdk5による変異型NPC1のin vitroリン酸化・・・細胞内ドメイン変異型及び野生型NPC1のループ1-2の組換え蛋白質を作製し、Cdk5によりリン酸化を受けるか検討した。同ループがCdk5によりリン酸化を受けることを確認した。さらに、リン酸化部位について質量分析法にて同定を試み、320番スレオニンがリン酸化部位であることを同定した。 2.Cdk5による変異型NPC1のin vivoリン酸化・・・細胞内ドメイン変異型NPC1の320番Thrのリン酸化を認識するリン酸化抗体を作製した。ニーマンピック病患者から樹立された細胞内ドメイン変異型NPC1発現している線維芽細胞におけるNPC1のリン酸化について、同リン酸化抗体を用いて検討した。その結果、ニーマンピック病患者の細胞では、NPC1の320番目のスレオニンが著しくリン酸化されていることが明らかになった。 3.変異型NPC1発現神経細胞におけるCdk5活性について・・・細胞内ドメイン変異型NPC1を発現している細胞内のCdk5およびCdk5活性化因子p35,p39の蛋白ならびにmRNA発現について、正常NPC1発現コントロール細胞内のそれらと、ウエスタンブロッティング法・定量PCR法にて比較検討した。Cdk5ならびにp35の発現に有意な差が認められなかったが、変異型NPC1発現細胞においてp35の限定分解産物であるp25の著明な発現が認められた。それに伴う、Cdk5の異常活性化が変異型NPC1発現細胞において認められた。
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