研究課題
基盤研究(C)
大脳基底核による随意運動の制御機構に対して大脳皮質、特に前頭皮質からの入力がどのような機能を有しているのかを、マウスにおけるドーパミン系薬物(メタンフェタミン、METH)の皮下投与により誘導される運動亢進を実験モデル系として検討した。先ず、マウスにおいても前頭前皮質から、大脳基底核の構成核である視床下核に直接の投射(ハイパー直接路)があるかどうかを、順行性および逆行性神経標識実験によって検索したところ、C57BL/6Jマウスにおいてもラットなどと同様にそのようなハイパー直接路は存在することを確認した。薬物誘導性運動に対するハイパー直接路の機能を調べるために、覚醒マウスの前頭前皮質の機能をGABAA受容体の作動薬であるムシモールの微量注入によって抑制すると、METH誘導性の運動亢進は有意に減弱した。この際に、視床下核の活動性をc-fos遺伝子発現を神経活動のマーカーとして用いて評価したところ、視床下核ではc-fos発現も対照群に比べて有意に減弱していた。前頭前皮質はMETHの投与によって有意に活性化することから、前頭前皮質のドーパミン伝達をドーパミンD1もしくはD2受容体の遮断剤を局所注入して阻害したところ、METH投与によって誘導される運動亢進も視床下核の活動亢進もそれらの受容体阻害剤によって有意に減少した。以上のことから、METHなどのドーパミン誘導性運動の調節には、ドーパミンD1ならびにD2受容体の活性化に媒介された前頭前皮質の活性化と、そこからの興奮性入力によって活性化される視床下核の活性化が促進的に機能すると示唆される。今後は、前頭前皮質から視床下核に入力するグルタミン酸性伝達の役割や、そのハイパー直接路の機能を他の神経回路から分離して解析する計画である。
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Neuroscience doi:10.1016/j.neuros cience.2007.02.044(印刷中)
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