必須アミノ酸トリプトファンの中間代謝産物キノリン酸によって誘発される神経細胞死のメカニズムを明らかにする目的で、キノリン酸代謝酵素QPRT遺伝子ノックアウトマウスの作出を試みた。実験モデルの有用性は、QPRT欠損によってトリプトファン代謝産物のひとつで神経毒性を持つキノリン酸(QA)の生体内濃度、特に脳内濃度が上昇する危険性があり、これが神経細胞変性疾患のモデルになりうる京点である。QPRT遺伝子構造の解析、ノックアウトベクターによる組み換え、組み換え型マウスES細胞の選別に成功した。このES細胞を胚盤胞に導入しキメラマウスの作出に成功した。数回の試行の後、キメラマウスからF1ノックアウトマウスを作出することができた。一方、キノリン酸による神経細胞死のメカニズム解明のモデルとして、ハンチントン病(HD)マウスを用いて検討を進めることにした。このマウスで、トリプトファン代謝関連酵素群の酵素活性を測定した。正常マウスとHDマウスを比較すると、両臓器、両週齢ともHDマウスでACMSD活性が低下しており、8週齢、11週齢の肝臓においては有意(P<0.05(8週齢)、P<0.01(11週齢))に低下していた。QAを消去するQPRTの活性は肝臓でも腎臓でもよ正常マウスとHDマウスの間に有意な差は観察されなかった。
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