M6aは成長円錐に多く分布することで同定された4回膜貫通タンパク質である。申請者らは、培養軸索のM6aにモノクローナル抗体が結合すると、軸索伸長を強力に阻害することを見いだした。この軸索伸長阻害の特徴は、成長円錐の形態や運動性に影響を与えない事であり、反発性の軸索ガイド分子による"成長円錐の崩壊"とは極めて対照的な反応である。M6aの生理的機能を探るために、M6aタンパク質を完全に欠損した遺伝子破壊マウスを作成した。その結果、M6a遺伝子が欠損したホモマウスでも生存可能であることが示された。神経系の詳細な解析は今後の課題であるが、少なくともM6aタンパク質が無くても軸索は伸長できることが示された。さらに、このM6a遺伝子欠損ホモマウスから調製した神経細胞を培養することで、モノクローナル抗体による軸索伸長停止反応が、M6aタンパク質を介した"gain-of-function"的な機構により引き起こされていることを明らかにした。この結果は、M6aの生理的機能を考える上で非常に重要な発見である。更にGFP標識したM6aを用いてライプイメージングを行い、抗体添加により、成長円錐端のM6aがはぎ取られ、成長円錐の基部に沈着する事が明らかとなった、この劇的なM6aの再配置が、軸索伸長停止を引き起こす可能性が考えられる。培養細胞でM6aを強制発現させると、M6aタンパク質は細胞骨格非依存的に細胞辺縁に集積し、細胞骨格を含まない膜管状構造を誘導する。このようなM6aのもつユニークな細胞膜の形態形成能力は、M6aの機能や局在機構を理解する上での鍵となるかもしれない。
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