研究概要 |
脳機能を支える神経伝達は、神経細胞のシナプス内外の膜上に存在する機能分子に担われており、これら分子の正確な局在を知ることは神経伝達の分子機構の理解に必須である。そこで個々のシナプス上の分子を定量的に解析できる凍結割断レプリカ標識法(SDS-digested freeze-fracture replica labeling, SDS-FRL法)を神経組織へ応用出来る様改良し、神経細胞膜上分子を高解像度且つ定量的に解析できる系の確立に向け研究を進めてきた。本課題では、SDS-FRL法の定量性を向上し、且つ、神経科学一般の研究課題に応用できる様、下記の工夫を行い定量的な膜タンパク質局在解析法の技術基盤を確立することを目指している。 1、凍結組織割断時に起こる各分子の分配様式を解析する方法の確立 2、光学顕微鏡レベルと電子顕微鏡レベルのどちらでも検出可能な細胞標識法の確立 3、凍結組織の割断面を制御する方法の確立 本年度は上記1と2について検討を進めた。 1)定量的な分子局在解析にはレプリカ作成時に生じる2種の細胞膜面上に各分子がどの様な割合で分配されるかを知る必要が有る。そこでウィルスベクターを用いた遺伝子導入法を用いて、分子分配解析用の改変遺伝子を脳内神経細胞に発現させレプリカ解析する系を立ち上げた。得られたレプリカを、現在解析中である。 2)脳内に低い割合で存在する特定の細胞の解析対象を、電顕下で見つけるには大変な時間と労力を要する。この様な問題点は解析対象を同一の試料内で光学顕微鏡と電子顕微鏡の二つのレベルで観察できるようにする事で改善できる。そこで種々の膜結合型蛍光タンパク質(レポーター)の遺伝子を、ウィルスを用いて導入し、両レベルで検出できるかどうかを検討した。その結果、二つのレポーターを見出し、この方法で観察の効率化が図れることを確認した。
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