AATYK(Apoptosis-Associated tyrosine kinase)は、N末側にチロシンキナーゼ相同領域とC末側にプロリンに富む長い尾部を持つ分子量約200kDaの膜結合キナーゼで、脳に選択的に発現している。小脳顆粒細胞の細胞死や神経突起伸長への関与が示唆されているが、その分子機構については明らかになっていない。本研究は、AATYKの神経突起伸長作用に着目し、其の分子機構を明らかにすることにより、神経回路形成過程における新たな知見を得ることを目的にする。本年度は、AATYKと相互作用する蛋白質、リン酸化基質の候補について、プロテオーム解析を用いてスクリーニングを行った。Yeast two-hybrid法とGST-pull down法により数種の結合候補タンパクを得、其の中には既に結合が報告されているPP1(Protein Phosphatase 1)も含まれていた。いくつかの同定されたタンパク質については、免疫沈降法により両者の結合が動物細胞内でも確認できた。また、AATYK発現でリン酸化が亢進するタンパク質について2D-DIGE(2次元ディファレンシャルゲル電気泳動)法で解析を行い、数個のスポットを得ている。同定されたタンパクの2D-ウェスターンでは、AATYK発現により、リン酸化によると思われる当電点変化を示すスポットのシフトが観察された。現在、これらのタンパク質との結合やリン酸化の生物学的意義、神経突起伸長との関係について解析中である。
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