(1)神経伝達におけるグルタミン酸受容体とカルシウム結合蛋白の機能連関 本年度は、カルビンジン(CB)の局在を発生過程で解析した。大脳皮質から培養神経細胞を作製し経時的に固定しCBの局在を見たところ、グリアが存在すること、培養日数が長いこと、細胞密度に高いことが、CBの核移行を促進することを見いだした。今後、CBの核移行と神経細胞の成熟、シナプス形成などの関連を明らかにしたい。 (2)転写抑制蛋白RP58欠損マウスにおける神経細胞の分化異常と位置異常 転写抑制蛋白RP58の発現をin situハイブリダイゼーシン法を用いて調べたところ、前脳領域ではRP58は大脳皮質のグルタミン酸作動性ニューロンに特異的に発現することが示された。胎生期で大脳皮質に強く、被蓋、小脳で弱い発現がみられた。神経系以外では、骨格筋、膵臓などでも弱い発現が見られた。大脳皮質では、脳室帯に弱く、移動中、あるいは成熟したニューロンで強い発現が見られた。成体においては大脳皮質、海馬、小脳の穎粒細胞で発現が見られた。 大脳皮質の層特異的な分子の発現を調べた。6層のマーカーTbr1はRP58欠損マウスでは皮質板に瀰漫性に発現しており、明らかな神経細胞の位置異常がみられた。2/3層のマーカmSorLA、4層のマーカRORβの発現はRP58欠損マウスの大脳皮質では見られなかった。従って6層のニューロンには位置異常が、2-4層のニューロンは分化異常があると考えられる。今後、RP58のターゲット遺伝子の同定等を通して、新たな脳形成シグナルの同定を目指す。また、RP58欠損マウスではカルシウム結合蛋白カルレチニンに異常発現がみられ、RP58とカルレチニン発現変化の分子機構を明らかにしたい。
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