研究課題
基盤研究(C)
本課題ではセリンプロテアーゼであるプロテアーゼM/Klk6の機能をノックアウトマウスを用いて検討し、特に脱髄への関与を詳細に検討した。1.Klk6ノックアウトマウス(Klk6-KO)の行動を観察したところ、野生型マウスと比較して有意な差は認められなかった。2.脳と脊髄より凍結切片を作成し、ニッスル染色を施して顕微鏡課で観察を行ったが、Klk6-KOと野生型の問の組織構築には有意な差は認めなかった。Klk6-KOと野生型マウス脊髄をホモジネートし、ウェスタンブロットを行った。抗ミエリン塩基性タンパク質(MBP)抗体および抗CNPase抗体を用いて解析したが、両遺伝子型間でこれらの発現量の差は認められなかった。また、電子顕微鏡による微細構造の検討を行った。オリゴデンドロサイトの形態とミエリンの形態を比較したが、有意な差は認められなかった。3.多発性硬化症のモデルであるexperimental allergic encephalopathy(EAE)を作成した結果、Klk6-KOマウスでは野生型に比べ発症が遅れ、症状も軽度であった。脊髄を組織学的に検討したところ、Klk6-KOマウスではリンパ球などの細胞浸潤は認められるものの、脊髄実質内への細胞の拡散の程度は野生型よりも軽度で、脱髄も軽度であった。4.脊髄損傷後の変化を観察した。損傷後の麻痺の回復はKlk6-KOマウスの方が良好であった。ウェスタンブロットではKlk6-KOの脊髄においてはMBP量が少なかった。これは、変性したMBPがより速く除去された結果だと考えられるが、今後のさらなる研究が必要である。5.ニューロプシンノックアウトマウスでのKlk6発現は中枢神経系内では野生型との差はなかったが皮膚においては有意に少なかった。これらの結果より、プロテアーゼM/Klk6は中枢神経損傷時の脱髄に関与している事が示唆された。
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