研究概要 |
随意および不随意運動の要である大脳基底核の入力部位は線条体であり、ここにはパッチ・マトリックスという解剖学的なコンパートメントが存在することが知られている。しかし線条体の入出力に関してこのコンパートメントでどのような違いがあるのかは未だ明確にされていない。これを明らかにするため申請者らは、まず入力に関しては、大脳皮質-線条体投射系と視床-線条体投射系の全てを2種類のシナプス小胞性グルタミン酸トランスポーター(VGluT1,VGluT2)を用いて可視化し(Ftjiyama et al.,2004)、各々のパッチ・マトリックスへの入力の量的および質的な違いを検討した(Fujiyama et al.,2006)。今年度は、出力に関して、GFPを発現させるウイルストレーサーによるシングルトレースでパッチおよびマトリックス領域からの入出力様式の違いを明らかにし、これと、直接路・間接路というコンセプトとの関係を探り、大脳基底核ネットワークの基本でありながら曖昧なままにされてきた諸問題に新しいツールを使って解答をだす。具体的には、パッチのニューロンが視床のどの部位から投射を受けているのかはほとんど解明されていないため、視床に膜移行性シグナルをつけGFPを発現するSindbisウイルストレーサーを注入し、パッチおよびマトリックスへ投射するシングルニューロンをトレースし、各々の領域に分布する投射終末の数を解析し、視床のどの亜核がパッチおよびマトリックスを駆動しているのかを明らかにする。また、同様な方法でラットの線条体にSindbis virusを順行性に感染させパッチあるいはマトリックスを確認した上で、その投射軸索の投射様式を明らかにする。
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