骨盤内臓運動ニューロンを含む、腰仙髄の運動ニューロンの発生・分化過程を探る目的で、運動ニューロンへの誘導に関係するとされているLIM蛋白質、Islet-1、Islet-2の発現を胎生期のマウスで調べた。Islet-1は13.5Eにおいて、体性運動ニューロン群や、副交感節前ニューロンからなる中間質外側核に発現していたが、他の運動ニューロン群での発現が徐々に減弱するのに対し、Onuf核に相同とされる尾側のdorsolateral nucleusでは15.5Eにおいても強い発現が認められた。したがって、発生過程のOnuf核のニューロンは、他の体性運動ニューロン群とは異なる化学的特性を持っていることが明らかになった。また、体性運動ニューロン群の間でも、Islet-1の発現パターンには時空間的に大きな違いがあることから、Islet-1は従来言われていたような、運動ニューロンへの誘導に関係するだけでなく、運動ニューロン群の分化にも影響を与えている可能性が示唆された。一方、骨盤内臓神経が関わる反射経路の発生を明らかにする目的で、脊髄に投射する一次知覚神経をTRPV1、カルシトニン遺伝子関連ペプチドをマーカーとして調べたところ、一次知覚神経から仙髄副交感節前ニューロンへの直接投射を介する反射経路がE16において確立していることが明らかになった。 系統発生学的立場からは、ゼノパス(両生類)の交感節前ニューロンの構成について、その全体像の詳細を明らかにした。交感節前ニューロンは、内外側に四つのニューロン群に分かれ、そのうち、内側のintercalated nucleusと外側のintermediolateral nucleus(IML)にほとんどの節前ニューロンが存在していることがわかった。また、内臓神経を経由して骨盤内臓を含む腹部内臓の調節に関わっているニューロンは、哺乳類とは異なってIMLに集中していることも明らかになった。
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