研究概要 |
本年度は、昨年に引き続き予定の通り生後3日(P3),P12,P28の子ラットを断頭し、脳を取り出し,液体窒素で冷やしたイソペンタンで冷凍した。クリオスタットで10μmの切片を作り、ライカのフォイル付スライドグラスに貼り、トルイジンブルー溶液で染色した。スライドグラスをLaser microdissection systemに載せ、2つの大脳皮質領域(辺縁新皮質の代表として、帯状回後部皮質、一次感覚野の代表としてバレル皮質)の5層、およびコントロールとして2層を、レーザーマイクロダイセクション法を用いて、キアゲン社RNAeasy Mini KitのRLT bufferを入れたカップに回収した。RNAeasy kitのプロトコールに従い、RNAを抽出した。一部の溶液でアジレント2100バイオアナライザーを用いてRNAの質を確認した。良好な結果がえられたことを確認後、RNA溶液を2回amplifyした。アジレント社のbiotin direct label kitを用いて、kitのプロトコールに従いRNAをbiotin標識した。Biotin-LabeledしたcRNAサンプルをアフィメトリックス社rat GeneChipにHybridizationした後、Fluidics Station 400で洗浄、染色後GeneArray Scannerで蛍光を読み取った。これをGenechip解析ソフト、Genespringで解析し、各年齢、各領域、各層で特異的に発現している遺伝子が多数見つかった。その後、確認としていくつかの遺伝子をin situ hybridizationを行い、かなりの一致が見られた。解析により、NT3、Fatなどの遺伝子が後部帯状回の2層のP3で特異的に発現していることを見いだした。この遺伝子の機能を調べるために、NT3をバレル皮質の2層に電気穿孔法を用いて導入したところ、バレルの2層の細胞の錐体細胞の樹状突起が、帯状回の2層の細胞のように束を作ることを見いだした。このことはNT3が2層の錐体細胞の樹状突起の束の形成に重要であることを示していると考えら得る。
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