平成18年以前に、海馬錐体細胞全てに蛍光マーカータンパクを発現させるトランスジェニックマウスの作製に成功した。その経験から、マウス脳を組織の状態にて観察するためには、一部の錐体細胞にてシナプスマーカーを一定強度で発現する必要があることが分かった。この目的で、プロモーター/1oxP/マーカー(蛍光)タンパクをコードするDNA配列をもつトランスジェニックマウスを作製した。このマウスの一部の細胞のみにてCreリコンビナーゼが組み替えを起こせれば、そこだけでマーカータンパクが発現し、一部の錐体細胞に限定したシナプス・神経細胞の可視化が出来る。 本研究では、始めにGFP単独をloxP下流につないだトランスジェニックマウスを作製し、Creリコンビナーゼをコードするアデノウィルスを低濃度で海馬スライス培養系に感染させることで、海馬錐体細胞の一部に限局した神経細胞の可視化を確認した。次いで、PSD95と蛍光タンパクの融合タンパクをloxP下流につないだトランスジェニックマウスを作製した。 これらのトランスジーンを活性化させるにあたり、P1A施設にて生きた個体にCreリコンビナーゼを発現させるべく子宮内エレクトロポレーションにてCreを導入し、海馬にて限定的な発現活性化をアデノウィルス同様に行うことを目指した。期間中に、海馬にてこの方法にて発現させることに成功した。 また、観察系を整備するため、2光子顕微鏡のセッティング及びマウスの手術方法を検討し、大脳新皮質であれば、錐体細胞を経時観察できるレベルに観察系を調製できた。 今後後継の科研費を元に、これらのマウスと手法を用いて実際にシナプス解析を進めていく。
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