研究概要 |
γセクレターゼのAPP切断機構として、γセクレターゼが、膜・細胞質境界付近のε部位でAPPを切断した後、膜貫通領域のαヘリックスに沿って3アミノ酸残基ずつ切断し、最終的に膜内中央のγ部位で切断してAβを産生するという仮説を立て、その検証を行った。 まず初めに、γセクレターゼにより長いAβ(Aβ46)からAβ43とAβ40が産生されるかについて検討を行った。細胞をDAPTで処理するとラフト画分にAβ46が溜まる。この画分を用いてL685,458存在下でcell-free系によるAβ産生実験を行うと、βCTFの切断(AβとAICDの産生)が抑制されているにもかかわらずAβ40とAβ43が産生され、溜まっているAβ46が消失した。この時Aβ42は産生されなかった。この反応はγセクヒターゼ依存性であり、Aβ46の減少量はAβ40とAβ43の増加量の総和にほぼ一致した。これらの結果から、γセクレターゼはAβ46を切断してAβ40とAβ43を生じることが示唆された。 次に、γセクレターゼにより産生され膜から放出されると予想されるAPP膜貫通領域由来の3アミノ酸残基のペプチドを、LC/MS/MSを用いて直接的に検出し同定することを試みた。Cell-free系Aβ産生の反応液をHPLCで部分精製しLC/MS/MSで解析したところ、予想通りの5種類のトリペプチド、IAT、VIV、ITL、TVI、VITを検出、同定することができた。これらのトリペプチドの産生はL685,458により抑制された。従って、Aβが産生される際には、γ部位とε部位の間のAPP膜内領域が、γセクレターゼにより3アミノ酸残基ずつ切断されて、トリペプチドが放出されると考えられる。 以上の結果は、γセクレターゼがAPP膜内領域をC末端側から3アミノ酸残基ずつ切断するという仮説を支持する。
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