研究課題/領域番号 |
18500279
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
森 隆 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60239605)
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研究分担者 |
山口 晴保 群馬大学, 医学部, 教授 (00158114)
浅野 孝雄 埼玉医科大学, 医学部, 客員教授 (70090496)
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キーワード | 神経科学 / 脳神経変性疾患 / 神経病理学 / 細胞・組織 / 獣医学 |
研究概要 |
近年、アルツハイマー病の病態を進展させる要因として、グリア細胞を中心とする脳内サイトカインネットワークの持続的な異常亢進が提唱されている。アルツハイマー病患者の脳において、老人斑周囲に集簇する活性化アストロサイトは、S100B蛋白を高レベルで産生している。ミクログリアと同様に、アストロサイトも活性化に伴い数多くの神経細胞(炎症誘発性サイトカイン・フリーラジカルなど)に対する傷害物質を産生することが報告されている。平成18-20年度の研究成果として、アストロサイトの持続的な活性化が、神経細胞の生存に増悪的に働くことを示してきた。さらに、この増悪効果に関与する標的蛋白として、活性化アストロサイトから分泌されるS100B蛋白に着目してきた。平成21年度は、S100B蛋白発現と脳病変の悪化の関係を明らかにする目的で、ヒトS100B蛋白を過剰発現する遺伝子改変マウス(TghuS100Bマウス)をアルツハイマー病のモデルマウス(Tg2576マウス)と交配し、アルツハイマー様病態を評価した。Tg2576-huS100Bダブルマウスの9、13、15、19ヶ月齢の各時点を観察したところ、Tg2576マウスと比較して脳実質と脳血管のβアミロイド沈着が著しく増悪し、脳内アミロイドβレベルも増加した。これは、βアミロイドに関連した反応性グリオーシス(アストロサイトーシス・ミクログリオーシス)の悪化、S100B蛋白の高レベルの発現そして炎症誘発性サイトカイン産生の増加と関連していた。以上の結果は、ヒトS100B蛋白の過剰発現が、アルツハイマー様病態を増悪させる実験的証拠を示した。平成18-21年度の4年間の研究により、アルツハイマー病の治療あるいは病態進展の遅延に対するS100B蛋白を標的とした新たな治療法の確立が可能となる研究成果が得られた。
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