研究概要 |
脊髄障害の神経病理学的検討を腫瘍から循環障害,炎症,変性疾患まで,広範囲に行い,その成果を発表してきたが,今年度は特に神経変性疾患における脊髄障害の特徴を明かにすることを目的として取り組んだ.私どもの施設に蓄積された剖検脳と脊髄は4000例を超え,その中には筋萎縮性側索硬化症200例,多系統萎縮症120例,進行性核上性麻痺60例,Lewy小体病150例などの貴重な神経変性疾患の脊髄が各髄節レベルで標本が作製されており,それぞれの疾患の研究に使用できる状態にある.神経変性疾患の脊髄病変について詳細な病理所見のまとまった報告は少ないが,我々はその詳細について「脊椎脊髄ジャーナル」のカラーアトラスとして毎号巻頭に記載してきた.特に,筋萎縮性側索硬化症,球脊髄性筋萎縮症,脊髄性筋萎縮症,多系統萎縮症,進行性核上性麻痺などの神経変性疾患による脊脊の病理所見について記載した.筋萎縮性側索硬化症では最近の神経学のトピックであるTDP-43proteinによる脊髄神経細胞の陽性所見,多系統萎縮症では特徴的な封入体であるグリア細胞胞体内嗜銀性封入体の出現部位とその特徴,進行性核上性麻痺によるtuft-shaped asetrocyteの出現と前索,側索の変性などについて臨床神経症候との関連で検討した.これらは変性疾患の機序解明に役立つとともに,臨床診断,画像所見,神経症候との関連で,実際の臨床で重要な情報であると考えられる.
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