研究概要 |
2つの受容体型膜蛋白質SHPS-1とCD47は,細胞間で互いの細胞外領域が相互作用し,多様な細胞機能を制御する細胞間相互作用シグナルシステムCD47-SHPS-1系を形成する。SHPS-1はその細胞内領域がチロシンリン酸化を受け,チロシンホスファターゼSHP-2と結合して下流へとシグナルを伝える。一方,昨年度の研究成果により,CD47の下流では,GDP/GTP交換因子であるVav2,FRGが,Srcファミリーチロシンキナーゼにより活性化し,低分子量Gタンパク質Rac,Cdc42を介して神経突起の形成を促進する可能性が示された。本年度の研究では,培養細胞に発現させたCD47が隣接する細胞上のSHPS-1と細胞間で相互作用した後,その複合体が主にSHPS-1発現細胞内へと細胞を越えてエンドサイトーシス(トランスエンドサイトーシス)されることを見出した。このトランスエンドサイトーシスには,一般的な膜タンパク質のエンドサイトーシスに重要なクラスリンやダイナミンが関与しており,さらに,低分子量Gタンパク質Rac,Cdc42を介したアクチン細胞骨格の制御により促進されることが示された。また効率的なCD47のトランスエンドサイトーシスに必要なSHPS-1の細胞内膜近傍領域を同定した。さらに,CD47とSHPS-1を介した細胞凝集塊形成の観察により,このトランスエンドサイトLーシスによりCD47LとSHPS-1が細胞表面から取り除かれ,リソソームで分解されることでCD47-SHPS-1系シグナルが終結する可能性を見出した。CD47とSHPS-1は神経系で特に強く発現するが,神経細胞間ではCD47のトランスエンドサイトーシスは確認されなかった。一方,神経細胞に強制発現させたCD47が,アストロサイトヘトランスエンドサイトーシスされる様子が観察された。神経回路網の形成過程を制御するCD47-SHPS-1系の機能は,神経-グリア細胞間でのトランスエンドサイトーシスにより制御されている可能性が考えられる。
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