研究課題
基盤研究(C)
「G蛋白質とリン脂質制御系から成るポジティブフィードバックループ」によって、神経回路が形成され機能するために必要な「キー分子の局所的活性化」が生じる、という基本仮説を実証するべく研究を行った。まず、ポジティブフィードバックループの実体について、RNAiその他の実験により、PI3K、PIP3、Vav、Rac1/Cdc42、アクチン重合がその構成因子であることを示した。ついで、アクチン重合がPI3Kの活性化に必須であることを示し、ポジティブフィードバックループの実体を明らかにした。さらに、このポジティブフィードバックループの証明のために、Rac1を刺激誘導的に活性化するシステムを構築した。これは、Rac活性化因子Tiam1をRapamycin依存性に細胞膜へ移行させ、Rac1のみを選択的に活性化する方法である。しかし、PC12細胞においてはRac1活性化のみでは、PI3Kの活性化は観察されなかった。一方、神経成長因子(NGF)の刺激をいれた状況では、Rac1活性化が、PI3Kの活性化を誘導することから、このモジュールは不完全に独立したポジティブフィードバックループを形成していることがわかった。この研究の過程でわれわれは、負の制御機構もまた神経突起形成にたいへん重要であることを見出した。すなわち、NGF依存性にPIP3脱リン酸化酵素SHIP2が活性化されること、この負の制御がPI3KおよびRac1の活性を局所化させ、ひいては神経突起の誘導を行うことを発見した。これらの観察は、ポジティブフィードバックループとネガティブ制御機構とが協調的に作用することが神経突起の形成に重要であることを示している。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Dev. Cell 11
ページ: 411-421
Methods Enzymol 406
ページ: 315-332