研究概要 |
時計モデル細胞を同調/リセットシグナル(Dexamethazone ; Dex)でパルス(15分-2時間)処理する際、リン酸化をERK, CKI等の可逆的キナーゼ阻害剤、ユビキチン化蛋白質分解の可逆的阻害剤(MG132)で、各々あるいは様々な組み合わせで同時に処理した。その影響をBMAL1時計蛋白質の時間変化を阻害剤無しのコントロールと比較解析した。核細胞質局在について、コントロールでは同調処理15分でBMAL1は同調した核局在を示した(BMAL1同調反応)のに対して、MG132添加した細胞群では同調処理しなかったのと同様に核細胞質局在パターンが同調しておらず、単一細胞レベルでの時計の位相がずれていた。イムノプロットによる解析の結果、細胞質のBMAL1がBMAL1同調反応では減少することが明らかとなった。また同調処理によってBMAL1の迅速なユビキチン化が認められたが、ERK/CKIの可逆的キナーゼ阻害剤を添加するとユビキチン化が顕著に阻害された。したがって、BMAL1同調反応はERK/CKIのリン酸化に依存したユビキチンプロテアソーム系を介する細胞質BMAL1の分解によって起こっていることが強く示唆された。さらに、BMAL1が制御する時計遺伝子であるPer2のプロモーター下流のルシフェラーゼ活性を指標として、時計発振リズム(Per2/Luc-reportingリズム)をリアルタイムモニタリングした。コントロールでは正常なリズムがみられるが、可逆的阻害剤であるMG132処理した細胞はリズムの振幅が著しく減少し、速やかな減衰が認められた。また、BMAL1の核細胞質局在パターンは同調処理後(たとえば24時間後)においても同調していなかった。この結果から、MG132が阻害するユビキチンプロテアソーム系を介した蛋白質(おそらくBMAL1等)の分解が、細胞間で同調した体内時計のリズムの発振/継続に重要な寄与をしていることが示唆された。
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